“別れのたびに、どうして悲しくなるのか、いったいどうすれば寂しくないのか、どうすれば憂鬱や、寂寥感や、焦燥感、そして喪失感から逃れられるのかと考える、
君とずっと抱き合っていたいのか、手を握っていたいのか、話したいのか、わたしは考えるけど、そういうことではないのだとすぐに気づく、全部違う、どんなことをしても、続けるうちに飽きるに決まっている、つまり、離ればなれになるのがいやだからと、あなたを切り刻んでミイラにして保存しても意味がない、
つまり、わたしはあるとき、気がついたの、取り戻せない時間と、永遠には共存し合えない他者という、支配も制御もできないものが、この世に少なくとも二つあることを、長い長い自分の人生で繰り返し確認しているだけなのだって、わたしは気づいたの。”
— 歌うクジラ下巻/村上龍